クラウドリージョン
リージョンとAZ/ゾーンの違いと実務的な選び方
クラウドリージョンとは:可用性・パフォーマンス・コンプライアンス
IT導入や活用をご検討されている中小企業の皆様、そしてITに関する知識を深めたいと願う皆様、こんにちは。JUICYです。
近年、クラウドという言葉を耳にしない日はないほど、私たちのビジネスや生活に深く浸透してきました。しかし、「クラウド」と一口に言っても、その実態は多岐にわたります。特に、AWS、Azure, Google Cloudといった主要なクラウドサービス(通称「Cloud Titans」)は、それぞれ異なる特徴を持ち、どこを選べば良いのか迷ってしまう方もいらっしゃるのではないでしょうか。
このセクションでは、クラウドサービスを利用する上で非常に重要な「サービス提供地域」と「クラウドリージョン」という概念について、その概要と重要性をわかりやすく解説します。クラウドリージョンと冗長性単位(AZ/ゾーン/AD)の選定は、可用性・レイテンシ・コンプライアンスを左右する最初の設計判断です。本稿では主要プロバイダーごとの違いと、実務で使える選定手順を示します。

主要クラウドリージョンプロバイダーと冗長性単位の比較
クラウドサービスを選定する際、各ベンダーがどこでサービスを提供しているか、そしてその地域がどのような特性を持っているかを理解することは非常に重要です。ここでは、主要な「Cloud Titans」であるAWS、Azure, Google Cloud, OCIが、それぞれどのようなサービス提供地域戦略をとっているのかをご紹介します。各社の個性を知ることで、貴社にフィットするクラウドリージョンの姿が見えてくるかもしれません。
| プロバイダー | 冗長性単位の名称 | リージョン数(最新) | ゾーン/AD構成 | 特筆点 | 公式情報 |
| AWS (Amazon Web Services) | アベイラビリティゾーン (AZ) | 37 | 117 | 広範なグローバル展開、先行者としての豊富なサービスラインナップ。 | AWS グローバルインフラ |
| Azure (Microsoft Azure) | アベイラビリティゾーン (AZ) | 70以上 | 各リージョン内に複数(通常3つ) | 各国の規制に配慮したソブリンクラウド、既存Microsoft製品との高い親和性。 | Azure リージョンと可用性ゾーン |
| Google Cloud | ゾーン (Zone) | 40超 | 約130前後 | 最先端のAI/ML・データ分析技術、高速なグローバルネットワーク。 | Google Cloud リージョンとゾーン |
| OCI (Oracle Cloud Infrastructure) | アベイラビリティドメイン (AD) | 50超 | 各リージョン内に1つ以上(通常3つ) | 高性能データベースサービスに強み、エンタープライズ向けソリューション。 | Oracle Cloud Infrastructure グローバル・インフラストラクチャ |
AWSは業界トップクラスのクラウドリージョン数を誇り、各リージョン内に複数のAZを持つことで、高い可用性と耐障害性を提供しています。AzureはAWSに次ぐ広範なクラウドリージョン展開に加え、各国の規制やデータ主権に配慮した「ソブリンクラウド」を提供しています。Google Cloudは先進的なAI/MLサービスやデータ分析機能に強みがあり、クラウドリージョン間のネットワーク品質の高さには定評があります。OCIは高性能なデータベースサービスやベアメタルインスタンスが特徴で、エンタープライズ領域での強みを発揮しています。
これらのCloud Titansは、それぞれ異なる強みと戦略を持っており、お客様のビジネス要件や地域性に合わせて最適な選択肢を提供しています。
クラウドリージョンとAZ/ゾーン/AD:実例で学ぶインフラ選定
クラウドのサービス提供地域について考えるとき、避けて通れないのが「クラウドリージョン」と、それに紐づく「アベイラビリティゾーン(AZ)」、「ゾーン」、「アベイラビリティドメイン(AD)」といった冗長性単位の概念です。これらは、お客様のシステムがどこで、どのような冗長性を持って稼働するかを決定する、いわばクラウドインフラの航海図です。
- クラウドリージョン: クラウドプロバイダーがサービスを提供している独立した地理的エリア。電力供給やネットワークも分離され、あるリージョンで大規模障害が発生しても他のリージョンに影響が及ばないよう設計されています。
- アベイラビリティゾーン (AZ)/ゾーン/アベイラビリティドメイン (AD): 各クラウドリージョン内にある一つ以上の独立したデータセンター群です。それぞれ物理的に離れており、独立した電源、冷却設備、ネットワークを備えています。これにより、同じリージョン内であっても、ある冗長性単位で障害が発生しても、他の単位でサービスが継続できるような冗長性を確保しています。
実例:ECサイトの構築におけるクラウドリージョン選定
日本国内向けにECサイトを構築する場合を例に考えてみましょう。通常、東京クラウドリージョンを選択することが一般的です。
- レイテンシの最適化:
日本国内のユーザーからのアクセスに対して、通信速度を最適化し、快適なユーザー体験を提供するためです。
例えば、東京リージョンを選ぶことで、日本国内のユーザーからの平均レイテンシを数十ミリ秒以下に抑えることが期待できます。 - データ主権と規制遵守:
日本の法律や規制に基づき、データを日本国内に保持する必要がある場合があるためです。
金融機関や医療機関など、特定の業界ではデータの保管場所が厳しく定められていることがあります。 - 災害対策と可用性:
東京クラウドリージョン内には複数のAZが存在します。
例えば、ウェブサーバーをAZ-Aに、データベースをAZ-Bに配置することで、仮にAZ-Aで大規模な停電が発生しても、AZ-Bでサービスを継続できるような冗長構成を組むことが可能です。- 冗長構成パターン例:
- Webサーバー:
複数のAZにEC2インスタンス(AWSの場合)を分散配置し、ロードバランサーでトラフィックを分散。 - データベース:
マルチAZ配置(例:RDS Multi-AZ)により、プライマリDBに障害が発生した場合、自動的にスタンバイDBへフェイルオーバー。 - バックアップ:
東京リージョン内のS3(AWSの場合)にバックアップを取得しつつ、大阪リージョンなど別リージョンにもクロスリージョンレプリケーションで遠隔バックアップ。
- Webサーバー:
- 冗長構成パターン例:
クラウドリージョン選定の具体的な手順と考慮点
クラウドサービス導入にあたり、サービス提供地域やクラウドリージョン/冗長性単位の選択は、ビジネス成功に直結する重要なプロセスです。
ここでは、その具体的な手順と、考慮すべき点についてご説明します。
- ビジネス要件の明確化
ターゲットユーザーの地理的分布: 顧客の主要なアクセス元がどこにあるか。これにより、最も近いクラウドリージョンを選び、レイテンシを最小化します。
データの規制とコンプライアンス: 業界特有のデータ保存に関する規制や、国の法律(例: GDPR、日本の個人情報保護法など)を遵守する必要があるかを確認します。
特定の国や地域にデータを保持する「データ主権」の要件がある場合は、対応するクラウドリージョンを選定します。
パフォーマンス要件:
システムの応答速度や処理能力にどの程度のパフォーマンスを求めるのか。
災害対策と可用性の目標:
どの程度のダウンタイムが許容されるか。高い可用性が求められる場合は、複数AZ/ゾーン/ADに分散配置し、さらにリージョン間でのバックアップやフェイルオーバー戦略を検討します。
選定チェックリスト例:
・ 主要顧客はどこにいるか?(地理的近接性)
・ 扱うデータに特定の国での保管義務があるか?(法令遵守・データ主権)
・ システムが停止した場合のビジネス影響度は?(可用性要件)
・ 許容できる最大のシステム遅延は?(性能要件)
・ リージョンごとのコスト差はどの程度か?(コスト最適化)
・ 予期せぬ災害に対する復旧計画は必要か?(BCP/DRP) - クラウドリージョン/冗長性単位の選定
上記のビジネス要件に基づき、最適なクラウドリージョンと、そのリージョン内の冗長性単位の数を決定します。
- コストの考慮
クラウドリージョンによって、サービス料金が異なる場合があります。
同じ仮想マシンでも、リージョンが異なれば単価が異なることが一般的です。
また、リージョン間のデータ転送には追加コストが発生するため、データ転送量が多いシステムでは、このコストも考慮に入れる必要があります。
選択したリージョンの料金体系も確認し、予算内で最適な選択をしましょう。
クラウド活用の妙技:クラウドリージョンとAZ/ゾーン/ADの魅力と応用
クラウドリージョンと冗長性単位の概念は、単なるインフラの物理的な配置に留まらず、クラウド活用における無限の可能性を秘めています。これらの特性を理解し、戦略的に活用することで、ビジネスに大きなメリットをもたらすことができます。
- 耐障害性の向上と事業継続性の確保: 複数のAZ/ゾーン/ADやクラウドリージョンにシステムを分散配置することで、特定の地域で大規模な災害や障害が発生しても、サービスを継続できる堅牢なシステムを構築できます。これは、ビジネスの継続性を確保する上で不可欠です。
- グローバル展開の加速とユーザー体験の向上: 世界各地にクラウドリージョンが分散していることで、地理的に近い場所からサービスを提供できるようになります。これにより、ユーザーは低レイテンシで快適なサービスを享受でき、ビジネスのグローバル展開をスムーズに進めることができます。
- データ主権とコンプライアンスの遵守: 各国のデータ保護規制(例: EUのGDPR、日本の個人情報保護法)に対応するため、データを特定の国や地域内に保持する必要がある場合があります。クラウドリージョン選択によって、こうした法的要件をクリアし、ビジネスのリスクを軽減できます。一部のプロバイダーは、特定の国の規制に特化した「ソブリンクラウド」を提供しており、厳格なデータ主権要件に対応しています。
- コスト最適化の可能性: クラウドリージョンによっては料金体系が異なることがあります。リソースの使用状況やアクセスパターンを考慮し、最適なクラウドリージョンを選択することで、運用コストを最適化できる可能性があります。
これらの概念を理解し、適切に設定することは、一見すると煩雑に感じるかもしれません。しかし、もし怠れば、データが突然利用できなくなったり、海外からのアクセスが遅すぎて顧客が離れてしまったりといった事態を招く可能性があります。リソースが限られている中小企業こそ、クラウドの耐障害性やスケーラビリティを賢く活用し、堅牢なビジネス基盤を構築するチャンスです。
クラウドリージョンと冗長性単位は、ビジネスの未来を左右する重要な要素であると言えるでしょう。
FAQ:クラウドリージョンに関するよくある質問
A1. クラウドリージョンは物理的な地域を示し、その中に独立したデータセンター群が含まれます。
リージョン間レプリケーションは、あるリージョンから別のリージョンへデータを複製する仕組みを指し、主に災害対策やデータ移行に利用されます。
システム要件によりますが、高い可用性を求める場合は必須です。
同一リージョン内の複数AZ/ゾーン/ADへの分散はデータセンターレベルの障害に対応し、リージョンをまたぐ構成は地域全体の大規模災害に対応します。
特定の国・地域内のクラウドリージョンを選定し、そのリージョン内の複数AZ/ゾーン/ADにシステムを分散配置します。
また、その国・地域内で利用可能なリージョン間レプリケーションサービスを活用することで、データ主権を遵守しつつ可用性を高めることが可能です。
まとめ:クラウドリージョンを賢く活用するために
ここまで、クラウドサービスにおける「サービス提供地域」と「クラウドリージョン」という概念について解説してまいりました。
これらの概念は、クラウドという広大な領域を安全に、そして効率的に活用するための基本的な指針だと考えられます。どのリージョンを選び、どの冗長性設計を適用するかによって、システムの安全性も、パフォーマンスも、そしてコンプライアンス遵守の度合いも大きく変わってくるからです。
主要なクラウドサービスであるAWS, Azure, Google Cloud, OCIは、それぞれ異なる得意分野とクラウドリージョン戦略を持っています。貴社のビジネス要件、データの規制、そして将来的な展望を考慮し、最適なクラウドサービスとクラウドリージョンを選択することが、成功への第一歩です。
決して安易な選択をせず、じっくりとご検討ください。もし、どのクラウドリージョンを選べば良いかお迷いでしたら、ぜひJUICYにご相談ください。お客様のビジネスが、クラウドという大海原で輝かしい成果を上げるための、お手伝いができれば幸いです。
シリーズ記事:
参照
- AWS グローバルインフラ
- Azure リージョンと可用性ゾーン
- Google Cloud リージョンとゾーン
- CloudZero – Google Cloud Region List
- Oracle Cloud Infrastructure グローバル・インフラストラクチャ
The Cloud Titans #1-6
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