RFPテンプレート
十志サイト版 RFPテンプレート
0. はじめに
ITインフラエンジニアのHITOSHIです。 システム導入は、専門的で複雑に感じられるかもしれません。しかし、「提案依頼書(RFP)」を適切に作成することで、そのプロセスは劇的に変わります。このテンプレートは、貴社が求めるシステムを明確にし、ベンダーと協働で成功を掴むための「羅針盤」です。
特に、以下のような皆様に役立つことを願っています。
- 初めてRFPを作成するIT担当者、または非IT部門の責任者の方
- 過去のプロジェクトで認識のズレや失敗を経験された方
- ベンダーからの提案が、いつも期待と違うと感じている方
さあ、このテンプレートを手に、貴社のビジネスを加速させる第一歩を踏み出しましょう!
1. 提案依頼概要:プロジェクトの「なぜ」を明確にする
1.1. プロジェクト名:
プロジェクトの具体的な名称を記述してください
1.2. 目的とゴール:
ビジネス成果に直結する目標設定を!
このプロジェクトを通じて、貴社が「何を」「どう変えたいのか」を具体的に記述してください。システム導入がもたらすビジネス上の成果を、数値で測定可能な目標として設定することが重要です。
- 現状と課題(Before):
現在の貴社の業務やシステム環境における具体的な「困りごと」や「改善したい点」を記述してください。
(例:業務の非効率性、データの分散、顧客対応の遅延など) - システム化の目的:
なぜ今、このシステムを導入するのか、その背景と目的を記述してください。(例:業務効率化、コスト削減、顧客満足度向上、新規事業開始、など) - 最終的なゴール・目標(After):
システム稼働後に達成したい具体的なビジネス成果を、数値で測定可能な目標として設定してください。- 記述例:
- 「顧客満足度を〇%向上させる」
- 「A業務の処理時間を〇時間削減(現状比〇%減)」
- 「オンライン経由の売上を〇%増加」
- 「IT運用コストを年間〇円削減」
- 記述例:
【十志の助言】:
ゴールが明確であるほど、ベンダーは貴社のビジネスに貢献する具体的な提案を出しやすくなります。
1.3. 提案を依頼する範囲:
どこまでベンダーにお願いしたい?
ベンダーに求める役割と責任の範囲を明確にしてください。
- 該当する項目にチェックを入れてください:
- [ ] システム開発(設計・開発・テスト・導入)のみ
- [ ] 運用・保守まで含む
- [ ] 現状分析・要件定義からのコンサルティング含む
- [ ] ハードウェア・ソフトウェアの調達まで含む
- [ ] その他(具体的に記述:[ ])
【十志の助言】:
どこまでを外部に委ね、どこからを自社で担うのかを明確にすることで、ベンダーも提案しやすくなります。
2. 貴社の概要と現状:ベンダーが貴社を理解するための情報
2.1. 企業概要:貴社の顔を知ってもらいましょう
会社名、事業内容、設立年、従業員数、主要拠点など、貴社の基本的な情報を記述してください。
2.2. 対象部署・業務:システムが使われる現場を伝える
今回のプロジェクトに関わる主要な部署、現在の業務フロー、および利用している既存システムやツールを簡潔に記述してください。関連する組織図や業務フロー図があれば、添付または参照情報を記載してください。
2.3. 現状のIT資産(技術的詳細と活用意向):インフラ状況を共有する(状況に合わせて簡略化・省略可)
プロジェクトに関連する既存のハードウェア、ソフトウェア(OS、DB、ミドルウェアのバージョン、ライセンス情報含む)、ネットワーク環境、セキュリティ対策状況などを具体的にリストアップしてください。
- それぞれの資産について、プロジェクトにおける活用意向(例:継続利用、リプレース、連携、データ移行、クラウド移行など)を記述してください。
【十志の助言】:
既存資産の詳細を明確にすることで、ベンダーはより適切な技術選定や移行計画を提案できます。
特にセキュリティポリシーや既存インフラの制約は、隠さずに共有することで後々の手戻りを防げます。
3. 求める要件:システムに「何をしてほしいか」を具体的に
3.1. 機能要件:システムに求める「働き」を具体的に!
システムに求める具体的な機能を記述してください。各機能について、以下を明確にしてください。
機能名 | 概要 | 詳細 | 優先度 |
[例:顧客情報管理] | [顧客情報の登録・検索・更新] | [氏名、連絡先、購入履歴、担当営業の紐付け。複数担当設定可能。検索は部分一致可。] | [必須 / 高 / 中 / 低] |
[例:売上データ分析] | [日次・月次の売上を集計・分析] | [グラフ表示(棒グラフ、折れ線グラフ)、CSVエクスポート機能。期間指定、商品カテゴリ別、担当者別での集計。] | [必須 / 高 / 中 / 低] |
[ ] | [ ] | [ ] | [ ] |
- 【十志の助言】:
優先度を明確にすることで、予算や納期に制約がある場合に、ベンダーがどの機能を優先すべきか判断しやすくなります。
機能の実現手段については、ベンダーからの提案を受け入れる余地を残しつつ、コアとなる要件は具体的に記述してください。
3.2. 非機能要件(品質保証の基準):システムの「体力と賢さ」を数値で示す!(状況に合わせて簡略化・省略可)
システムの信頼性、性能、セキュリティ、運用性、拡張性など、機能以外の品質に関する要件を記述してください。可能な限り具体的な数値目標や条件を盛り込み、計測可能にすることが重要です。
- 性能要件:
- 例:ピーク時〇〇TPS(Transaction Per Second:1秒あたりのトランザクション処理数)を処理可能
- 例:〇〇件のデータ検索が〇秒以内
- 例:画面応答速度〇秒以内
- 可用性要件:
- 例:システム稼働率〇〇%以上
- 例:災害発生時のサービス復旧時間目標(RTO: Recovery Time Objective、サービスを復旧させるまでの目標時間)〇時間以内
- 例:データ損失許容目標(RPO: Recovery Point Objective、許容できるデータ損失量)〇分以内
- セキュリティ要件:
- 例:ISO27001準拠
- 例:データ暗号化の有無と対象、アクセス権限管理、Webアプリケーション脆弱性診断の実施(年〇回)、多要素認証の導入
- 運用・保守要件:
- 例:24時間365日監視
- 例:バックアップ頻度(例:日次、週次)
- 例:障害発生時の対応時間(例:緊急度高は〇時間以内)
- 例:問い合わせ窓口(受付時間、対応方法)
- 拡張性・保守性:
- 将来的な機能追加やシステム改修の容易さについての要望。
【十志の助言】:
非機能要件は、システムの「縁の下の力持ち」です。
ここを明確にすることで、導入後の「なんか重い」「すぐ止まる」といったトラブルを大きく減らせます。
3.3. 開発・技術要件:指定がある場合は明確に、なければ委ねる心も
希望する開発言語、フレームワーク、データベース、クラウド環境(AWS, Azure, GCPなど)などの指定があれば記述してください。
開発手法(例:アジャイル、ウォーターフォール)に関する希望があれば記述してください。
- ベンダーに委ねる範囲:
特定の技術指定がない場合、ベンダー独自の最適な技術提案を歓迎するかどうかを記述してください。- 例:「特定の技術指定は行いません。貴社が提案する最適な技術スタックを提案してください。」
- 例:「既存システムとの連携のため、データベースは〇〇(例:PostgreSQL)を希望します。それ以外の技術は貴社提案を歓迎します。」
【十志の助言】:
技術選定の自由度をベンダーに与えることで、より革新的な提案やコスト効率の良い提案を引き出すことができます。
3.4. テスト要件:品質担保のための約束事
どのようなテスト(単体テスト、結合テスト、システムテスト、受け入れテストなど)を実施するか、その範囲と貴社・ベンダー間の責任分担について記述してください。
3.5. 移行要件:スムーズなバトンタッチのために
既存データ移行の有無、移行対象データ量、移行期間、移行方法(手動、ツール利用など)に関する要望を記述してください。ダウンタイムの許容範囲も併記すると良いでしょう。
3.6. 納品物:何を受け取るか、明確に
希望する納品物(例:要件定義書、設計書、ソースコード、テスト計画書、テスト結果報告書、操作マニュアル、運用手順書など)を具体的にリストアップしてください。
3.7. 教育・研修要件:新システムを使いこなすために
システム導入後の利用者や管理者向けの教育・研修の有無、内容、対象者、期間、実施場所に関する要望を記述してください。
4. 予算とスケジュール:現実と希望のバランス
4.1. 予算(目安と柔軟性):コストと価値のバランスを見極める
本プロジェクトに割り当て可能な総予算の目安を記述してください。
- 予算の内訳(希望があれば):
構築費用、ハードウェア費用、ライセンス費用、初期導入費用、保守費用(年間)、トレーニング費用など。
【十志の助言】:
「この予算はあくまで目安であり、貴社にとってより最適な機能や品質が実現できる提案であれば、予算の見直しも検討する余地がある」
ことを示唆することで、ベンダーからの革新的な提案を引き出しやすくなります。
4.2. 希望スケジュール:いつまでに稼働させたい?
システム稼働までの希望する大まかなスケジュール(各フェーズの目安)を記述してください。
具体的なマイルストーンがあれば併記してください。
【十志の助言】:
ベンダーからの提案によっては、より効率的なスケジュールを提示される可能性もあります。
5. ベンダーへの要望と評価基準:最適なパートナーを見つける
5.1. ベンダー体制:貴社を支えるチーム構成
提案するベンダーのプロジェクト体制(プロジェクトマネージャーの経験、開発メンバーの役割と人数、連絡窓口など)に関する要望を記述してください。
5.2. ベンダーの経験・実績:信頼性の証明
貴社の業種や、類似システムの開発・導入実績に関する要望があれば記述してください。具体的な成功事例や導入事例の提示を求めることも可能です。
5.3. 提案内容の評価基準:選定の「ものさし」を明確に
貴社が提案を評価する際の具体的な基準と、それぞれの重視度(配点割合)を明確に記述してください。
- 評価項目例と配点例:
- 提案内容の網羅性と具体性: 25%
- 技術力・実現可能性: 20%
- 費用対効果(価格と価値のバランス): 20%
- ベンダーの経験・実績: 15%
- サポート体制・運用保守計画: 10%
- スケジュール妥当性: 10%
【十志の助言】:
特に重視する点を明記することで、ベンダーは提案の重点をどこに置くべきか理解し、貴社も公平かつ客観的に提案を比較検討できます。
6. プロジェクト推進体制と連携:スムーズな協業のために
6.1. 貴社プロジェクト体制:チーム十志を結成!
本プロジェクトにおける貴社の担当者(プロジェクトマネージャー、各担当部署の責任者、キーユーザーなど)を明確にし、役割分担を記述してください。ベンダーとの会議体や連絡頻度に関する希望もあれば記述してください。
6.2. 運用・保守体制(具体的な役割と責任):導入後の安心を確保する(状況に合わせて簡略化・省略可)
システム稼働後の運用・保守における貴社側のメンバー、責任者、およびベンダーとの連携方法(連絡フロー、エスカレーション手順、サービスレベル合意(SLA: Service Level Agreement、提供されるサービスの品質に関する合意)に関する考え方など)を具体的に記述してください。
【十志の助言】:
運用体制を事前に明確にすることで、導入後のトラブルを減らし、スムーズな運用移行を実現できます。
これはベンダーが保守計画を立てる上でも重要な情報です。
7. リスクと課題:不安要素を共有し、共に乗り越える
7.1. 潜在的なリスクと懸念事項:プロジェクトの落とし穴を予測する
本プロジェクト遂行上、貴社が認識している潜在的なリスクや懸念事項を記述してください。これらは、ベンダーが提案を検討する上で重要な情報となります。
例: 既存システムとの連携における技術的課題、社内調整の難しさ、予算の変動リスク、ユーザー部門のITリテラシー、特定の法規制への対応など。
【十志の助言】:
リスクを共有することで、ベンダーは事前にそれらを考慮した提案を行うことができ、予期せぬトラブルを回避しやすくなります。
正直な情報開示が、信頼関係構築の第一歩です。
8. 契約条件(概要):安心して進めるためのルール
8.1. 契約形態の希望:どんな契約で進めたい?
例:一括請負契約、準委任契約、月額保守契約など、希望する契約形態があれば記述してください。
8.2. 支払い条件:金銭面での取り決め
支払いサイト、分割払いなどの希望があれば記述してください。
8.3. 知的財産権:誰のもの?
開発された成果物の知的財産権の帰属に関する基本的な考え方を記述してください。
【十志の助言】:
契約に関する基本的な考え方をRFPの段階で共有することで、後の交渉をスムーズに進めることができます。
9. 提案依頼から契約までのプロセス:ロードマップの共有
9.1. プロセス:これからの道のり
RFP配布後、提案書の提出期限、質疑応答期間、プレゼンテーション実施の有無、評価・選定期間、契約締結までの大まかな流れを記述してください。
【十志の助言】:
ベンダーは提案にかけるリソースを計画するため、このロードマップが明確であると助かります。
9.2. 秘密保持契約(NDA):安心のための第一歩
貴社とベンダー間でのNDA(Non-Disclosure Agreement:秘密保持契約)締結の要否とタイミングを記述してください。
(例:RFP配布前、提案書受領前など)
【十志サイト版 RFPテンプレート 活用ガイド】
このテンプレートは、貴社のプロジェクト規模や特性に合わせて柔軟にカスタマイズ可能です。
- 小規模・簡易版での利用:
- 全ての項目を詳細に記述する必要はありません。
特に、2.3(IT資産の詳細)、3.2(非機能要件の詳細)、6.2(運用・保守体制の詳細)などは、貴社の状況に合わせて簡略化・省略してご活用ください。 - 重要度の低い機能要件(「低」や「あれば尚可」)は、初期段階では省略し、必要に応じてベンダーとの協議で追加検討することも可能です。
- 全ての項目を詳細に記述する必要はありません。
- 探索型・PoC型プロジェクトの場合:
- 要件がまだ不明瞭な場合は、本RFPテンプレートの前にRFI(情報提供依頼書:Request for Information)を活用し、まずはベンダーから幅広い情報や事例を収集することをお勧めします。
- RFIとRFPの使い分けについては、今後のコラムで詳しく解説予定です。
- テンプレートの記入例:
- 各項目の具体的な記入例やチェックリスト形式のサポートは、十志サイトで順次公開予定です。
これらを参考に、貴社の状況に合ったRFPを作成してください。
- 各項目の具体的な記入例やチェックリスト形式のサポートは、十志サイトで順次公開予定です。
【十志の助言】:
RFPは、あくまでプロジェクトを成功させるための「ツール」です。
最も大切なのは、RFPを通じてベンダーと密にコミュニケーションを取り、信頼関係を築くこと。
このテンプレートが、貴社とベンダーの素晴らしい出会いのきっかけとなることを願っています!
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