IaaS PaaS SaaS 違い
最高の料理は、素材に合わせた調理法選びから
はじめに:インフラの調理法は、料理の味を左右する大切な選択
システムのインフラを選ぶことは、最高の料理を作るための調理法を決めることと似ています。お客様に美味しい料理を届けるためには、食材の良し悪しだけでなく、どのような調理法を選ぶかが重要です。
たとえば、手軽に完成品を味わいたいのか、それとも自分でじっくりと手をかけて作りたいのかによって、選ぶべきサービスは変わってきます。ここでは、Google Cloudをはじめとするクラウドの世界でよく耳にする「IaaS」「PaaS」「SaaS」という3つの調理法と、それを支える仮想化技術について、料理に例えながらわかりやすくご説明します。JUICYもお客様の課題解決に貢献できるよう、きめ細かく、丁寧に解説いたします。

IaaS、PaaS、SaaSの違いを料理で理解する
IaaS(Infrastructure as a Service):材料と調理器具を借りる
IaaSは、料理の材料と調理器具(オーブン、コンロ、鍋など)を借りて、あとはすべて自分で調理するスタイルです。Google Cloudなどのクラウドでは、CPUやストレージ、ネットワークといったインフラの土台部分が提供されます。お客様は、この土台の上にOSやアプリケーションを自由にインストールできます。自由度が高い反面、OSのアップデートやセキュリティ対策といった運用管理の責任は、お客様ご自身にあります。
- 料理の例:
新鮮な野菜と肉、そして最新の調理器具が揃ったキッチンをレンタルし、自分でレシピを考えて調理するイメージです。
自分だけのオリジナルの味を追求できます。
PaaS(Platform as a Service):下ごしらえ済みの食材とレシピを活用する
PaaSは、食材がすでに下ごしらえされており、さらにレシピも用意されている状態で料理を始めるスタイルです。クラウドでは、OSやミドルウェアがすでにセットアップされた状態で提供されます。お客様は、アプリケーションの開発に集中できるのが大きなメリットです。インフラの運用管理はサービス提供者が行ってくれるため、手間が大幅に削減できます。
- 料理の例:
あらかじめカットされた野菜やマリネされた肉、そしてプロのシェフが考案したレシピがセットになったミールキットを活用するイメージです。
手軽に本格的な料理が楽しめます。
SaaS(Software as a Service):完成した料理をいただく
SaaSは、完成した料理をそのままお店でいただくスタイルです。クラウドでは、すでに完成されたアプリケーションが提供され、お客様はインターネット経由でそれを利用するだけです。ソフトウェアのインストールやメンテナンス、インフラの管理は一切不要です。すぐに使い始められる手軽さが最大の魅力です。
- 料理の例:
有名シェフのレストランに行き、コース料理を注文するイメージです。
調理の手間は一切なく、ただ座って美味しい料理を待つだけです。
図1:IaaS/PaaS/SaaSの責任範囲図

VMとコンテナの違い|厨房スタイルの選び方
IaaS、PaaS、SaaSといったサービスは、仮想化技術によって支えられています。これはまるで、料理を提供する「厨房」そのもののスタイルを選ぶことにも似ています。
VM(Virtual Machine):個室レストランの厨房
VMは、物理的なサーバーをソフトウェア的に分割し、それぞれ独立したOSを持つ「個室レストランの厨房」を提供する技術です。それぞれの仮想マシンは完全に分離されているため、堅牢性が高く、安定した環境を重視する本格的なコース料理(ミッションクリティカルなシステム)に適しています。
コンテナ:フードトラックの厨房
コンテナは、アプリケーションとその実行に必要な最小限のライブラリや設定を一つのパッケージにまとめる技術です。OSを共有するため、VMに比べて起動が速く、リソース消費が少ないのが特徴です。コンテナ技術自体は古くから存在しますが、クラウド開発やマイクロサービスでの主流化はVMより後の時代です。素早く移動し、効率的に料理を提供するフードトラックのように、アプリケーションの素早いデプロイやスケーラビリティを重視する場合に、特に威力を発揮します。
図2:VMとコンテナの構成比較図

FAQ
A. どのサービスが最適かは、お客様の目的によって異なります。
自由度を重視するならIaaS、開発の効率を優先するならPaaS、手軽に利用したいならSaaSがおすすめです。
A. オンプレミスは自社でサーバーやネットワーク機器を保有・管理するスタイルです。
一方、クラウドはサービスとして提供されるインフラをインターネット経由で利用します。
A. クラウド開発での主流化という観点ではコンテナの方が新しいですが、技術自体の起源はVMもコンテナも古くから存在します。
コンテナはより軽量で高速なため、現代のマイクロサービス開発で特に注目されています。
A. 仮想化技術により、一つの物理サーバーを複数の仮想サーバーとして効率的に利用できます。
これにより、リソースの有効活用やコスト削減につながります。
A. コンテナは、アプリケーションの環境を素早く構築・展開したい場合に非常に有効です。
開発環境と本番環境の差異をなくし、効率的な開発を実現できます。
A. Google Cloud、AWS、Azure、OCIなどの主要クラウドサービスで提供されている、仮想サーバー(Google CloudのCompute Engineなど)がIaaSにあたります。
A. Google App Engine、AWS Elastic Beanstalk、Azure App ServiceなどがPaaSの代表例です。
これらはアプリケーションの実行環境を提供します。
A. Gmail、Microsoft 365、Salesforce、Dropboxなど、ウェブブラウザやアプリからすぐに利用できるサービスはSaaSです。
A. はい、可能です。
たとえば、IaaSで構築したシステムに、SaaSの顧客管理ツールを連携させるなど、複数のサービスを組み合わせて使うことで、より柔軟なシステムを構築できます。
A. 単純な比較は難しいです。
SaaSは初期費用が抑えられますが、利用ユーザー数に応じて費用が増えます。
IaaSやPaaSは、使い方や運用管理にかかる人件費も考慮したトータルコスト(TCO)で比較する必要があります。
JUICYの個人的な感想:理想の調理法を見つける旅へ
ITの世界では、このようにさまざまな調理法が存在します。どれが優れているというわけではなく、お客様のビジネスの目的や規模、必要なスピードに合わせて最適なものを選ぶことが大切です。
たとえば、新しいWebサービスを素早く立ち上げたいならPaaSやSaaS、細部にまでこだわった独自のシステムを構築したいならIaaSが適しているでしょう。このコラムが、お客様にとって最適な「調理法」を見つけるためのヒントとなれば幸いです。詳細につきましては、ぜひJUICYまでお気軽にご相談ください。
※本記事に記載のサービス名(Google Cloud、AWS、Azure、OCI、Microsoft 365、Salesforce、Dropboxなど)は、各社の登録商標です。
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