ITインフラ基盤構築 設計書シリーズ:運用フェーズ – システム稼働後の継続的な価値提供【会員限定】

運用フェーズ

運用フェーズ – システム稼働後の継続的な価値提供

ITインフラ基盤構築プロジェクトにおける設計書の作成プロセスを、クライアントサイドとベンダーサイドの双方の視点から解説し、各工程のポイントやテクニックを深掘りしていきます。

はじめに:ITインフラ基盤構築における「運用フェーズ」という旅の継続

ITインフラ基盤の構築プロジェクトは、まるで壮大な航海のようです。私たちはこれまでに「羅針盤」(RFP)で目的地を定め、「航海図」(要件定義書)でルートを描き、「設計図」(基本設計書・詳細設計書)で船を建造し、そして「テスト」(品質保証)で船の安全性を確認してきました。

いよいよ船が出航し、目的地に到着したとしても、そこで旅が終わるわけではありません。むしろ、そこからが新たな「運用フェーズ」という航海の始まりなのです。この「運用フェーズ – システム稼働後の継続的な価値提供」というテーマでは、システムが稼働した後に、いかにその価値を維持し、さらに高めていくかについてお話しします。

私自身、これまで多くのシステムが稼働した後、その運用がいかに重要であるかを痛感してきました。どんなに素晴らしいシステムを構築しても、運用がおろそかになれば、その真価を発揮することはできません。

まるで、大切に育てた農作物が、収穫後も適切な管理をしなければすぐに傷んでしまうのと同じです。このシリーズが、皆さんのITインフラ基盤構築という旅の、確かな道標となることを願っています。

運用フェーズの目的と継続的な価値提供の重要性

ITインフラ基盤構築プロジェクトにおける運用フェーズは、構築・テストが完了し、システムが本番稼働を開始した後に、そのシステムが安定して稼働し続け、ビジネスに継続的に貢献していくための活動全般を指します。このフェーズの目的は、単にシステムを「動かす」ことではなく、システムの可用性、性能、セキュリティを維持・向上させ、ビジネスの変化に対応しながら「価値を提供し続ける」ことです。

運用がなぜ重要なのかといえば、ITシステムは一度構築したら終わりではなく、常に変化するビジネス環境や技術の進化に合わせて、改善し続ける必要があるからです。適切な運用が行われなければ、システムは老朽化し、性能は低下し、セキュリティリスクも増大します。結果として、ビジネス機会の損失や信頼性の低下を招くことになりかねません。DevOpsの考え方では、開発と運用が密接に連携し、継続的な改善サイクルを回すことで、サービスの価値を最大化することを目指します。運用フェーズは、ITインフラがビジネス価値を創造し続けるための心臓部なのです。

クライアントサイドの視点:システム活用と運用の最適化を推進する

ITインフラ基盤構築プロジェクトにおいて、クライアントである皆様の役割は、構築されたシステムを最大限に活用し、その運用をビジネスに最適化することです。この「運用フェーズ – システム稼働後の継続的な価値提供」の段階では、システムがビジネスにどう貢献しているかを評価し、必要に応じて改善の要求を出すことが求められます。

「システムの運用はベンダーに任せきりでいいのでは?」と思われるかもしれません。もちろん日常的な運用作業はベンダーが担当しますが、皆様にしかできない重要な役割があります。それは、「システムが提供する価値をどう高めるか」「業務プロセスとシステム運用をどう連携させるか」といった点です。

例えば、とあるシステム導入後、業務部門から「システムのレスポンスが遅い時間帯がある」という声が上がりました。クライアント側がこのフィードバックをベンダーに伝え、ベンダー側がパフォーマンス監視とチューニングを行うことで、最終的に業務効率が大幅に改善された事例があります。

このように、皆様のビジネスの視点から、システム活用状況を評価し、運用改善のニーズをベンダーに伝えることが非常に大切です。また、セキュリティインシデント発生時には、適切な情報共有と連携を行うことで、ビジネスへの影響を最小限に抑えることができます。クライアント側の積極的な関与が、システム運用の成功とビジネス価値の最大化に繋がります。

ベンダーサイドの視点:安定稼働と継続的なサービス向上を支える

ベンダーサイドの私たちにとって、この「運用フェーズ – システム稼働後の継続的な価値提供」は、構築したITインフラが安定して稼働し、お客様のビジネスに継続的に貢献できるよう、多角的なサポートを提供するフェーズです。ここでは、運用設計に基づいて日々の運用業務を遂行し、問題発生時には迅速に対応し、さらには将来を見据えた改善提案も行います。

運用フェズにおける主な活動は以下の通りです。

運用活動概要
監視システムのCPU使用率、メモリ使用量、ディスク使用量、ネットワークトラフィック、アプリケーションの応答時間などを常時監視し、異常を早期に検知します。監視ツール(例: Zabbix, Prometheus)を活用し、閾値を超えた場合にアラートを発報します。
バックアップ・リカバリデータの損失を防ぐために定期的にバックアップを取得し、障害発生時にデータを迅速に復旧できるよう、リカバリ手順を確立・検証します。災害対策(DR)計画もここに含まれます。
インシデント管理システム障害や異常が発生した際に、原因を特定し、迅速に復旧させるためのプロセスです。インシデントを記録、分類、優先順位付けし、適切な担当者へエスカレーションします。
問題管理複数のインシデントから根本原因を特定し、恒久的な解決策を講じるプロセスです。再発防止のための対策立案や、アーキテクチャ改善提案などを行います。
変更管理システムへの変更(パッチ適用、設定変更、バージョンアップなど)を計画的かつ管理されたプロセスで実施し、予期せぬ影響を最小限に抑えます。CI/CDパイプラインを活用し、変更の自動化とデプロイの信頼性を高めます。
セキュリティ運用脆弱性診断の定期的な実施、セキュリティパッチの適用、不正アクセス監視(SIEMなど)を通じて、システムを常に脅威から保護します。
キャパシティ管理システムのリソース(CPU、メモリ、ストレージなど)の使用状況を監視し、将来の需要増加に対応できるよう、計画的な増強や最適化を行います。
サービスレベル管理お客様と合意したSLA(Service Level Agreement)に基づき、サービスの品質目標(稼働率、応答時間など)を達成できているか監視し、必要に応じて改善策を講じます。

以前、あるシステムで特定の時間帯にパフォーマンス低下が発生するという問題がありました。監視ログを詳細に分析した結果、データベースの特定のクエリがボトルネックになっていることが判明し、クエリのチューニングとインデックスの最適化を行うことで、問題が解決しました。このように、ベンダーは技術的な専門知識と運用ノウハウを駆使して、お客様のシステムの安定稼働と継続的なサービス向上を支える役割を担います。

設計成果物の詳細:運用設計書という監視盤の青写真

「運用フェーズ – システム稼働後の継続的な価値提供」を支える重要な成果物が、「運用設計書」です。これは、システムが稼働した後にどのように管理・運用されるべきかを具体的に定めたドキュメントであり、航海の「監視盤」の青写真とも言えるでしょう。

運用設計書には、以下のような項目が詳細に記述されます。

  • 監視設計:
    • 監視対象(サーバー、ネットワーク、アプリケーションなど)
    • 監視項目(CPU使用率、メモリ使用量、ディスク空き容量、ログエラー、プロセス状態など)
    • 監視方法、ツール(Zabbix、Prometheus、CloudWatchなど)
    • アラート通知条件と通知先、エスカレーションフロー
  • バックアップ・リカバリ設計:
    • バックアップ対象、範囲、取得頻度、保存期間、保存場所
    • バックアップ方法、ツール
    • リカバリ手順、目標復旧時間(RTO)、目標復旧時点(RPO)
  • インシデント管理設計:
    • インシデントの定義、分類、優先順位付け
    • 検知から解決までのフロー、担当者、連絡体制
    • 報告様式、記録方法
  • 問題管理設計:
    • 問題の定義、インシデントからのエスカレーション基準
    • 根本原因分析の方法、解決策の立案と実施フロー
  • 変更管理設計:
    • 変更の申請・承認フロー、実施手順、テスト方法
    • 変更管理ツール(Jira, Redmineなど)の利用
  • 構成管理設計:
    • システムの構成情報(ハードウェア、ソフトウェア、バージョン、ネットワーク設定など)の管理方法
    • 構成管理データベース(CMDB)の利用
  • キャパシティ管理設計:
    • リソース使用状況の監視と分析方法
    • リソース増強の判断基準と手順

これらの運用設計書は、システムが安定稼働し続けるためのロードマップであり、トラブル発生時の迅速な対応を可能にするための重要な基盤となります。

品質保証とテストの観点:運用段階での品質を継続的に見守る

ITインフラ基盤構築における品質保証とテストは、運用フェーズにおいても継続的にその重要性を持ちます。システムは稼働後も常に変化し、新たな脅威や課題に直面する可能性があるからです。

運用フェーズにおける品質保証の観点としては、主に以下の点が挙げられます。

  • 継続的な監視とパフォーマンス評価:
    稼働後のシステムが、設計時に定めたSLA(Service Level Agreement)や非機能要件(性能、可用性など)を満たしているかを継続的に監視します。ボトルネックの早期発見や、リソース逼迫の予兆を捉えることで、サービス品質の低下を未然に防ぎます。
  • セキュリティ診断と脆弱性管理:
    新たな脆弱性が発見されたり、攻撃手法が進化したりするため、定期的なセキュリティ診断(例: 脆弱性スキャン、ペネトレーションテスト)やセキュリティパッチの適用が不可欠です。DevSecOpsのプラクティスでは、運用段階でもセキュリティを継続的に評価し、改善していきます。
  • 定期的な運用テスト:
    バックアップからのリストアテスト、災害復旧訓練(DR訓練)、フェイルオーバーテストなど、実際に障害が発生した際に運用手順が適切に機能するかを定期的にテストし、手順の改善や見直しを行います。
  • 変更管理とテスト:
    システムへの変更(機能追加、バージョンアップ、設定変更など)を行う際には、事前に影響範囲を評価し、適切なテストを実施することで、変更による新たな不具合発生のリスクを低減します。

このように、運用フェーズにおいても品質保証の視点を持ち続けることで、システムのライフサイクル全体を通して高い品質を維持し、ビジネスへの影響を最小限に抑えることができます。

運用設計と継続的改善:未来を見据えた航海の操縦

ITインフラ基盤構築は、システムが稼働して終わりではありません。むしろ、稼働後の「運用」こそが、システムの価値を最大化し、長く使い続けるための要となります。この「運用設計」もまた、要件定義という航海図から派生し、具体的なシステムの安全な稼働を保証するための「監視盤」のような重要な要素なのです。

テストフェーズで発見された不具合や改善点は、単に修正して終わりではなく、運用設計にフィードバックされるべきです。

例えば、特定の条件下で発生した障害が、運用段階でどのように検知され、誰が、どのような手順で復旧するのか、という運用フローに落とし込む必要があります。
また、負荷テストの結果に基づいて監視しきい値を設定したり、セキュリティテストで発見された脆弱性に対しては運用での対策を検討したりします。

DevOpsやSRE(Site Reliability Engineering)の考え方では、運用チームが開発フェーズから関与し、運用性や回復性を考慮したテストを行うことで、より運用しやすいシステムを構築することを目指します。運用設計は、システムの安定稼働と継続的な価値提供を支える柱となるでしょう。

まとめ:システム構築という旅路を導く羅針盤と航海図、そして監視盤

ITインフラ基盤構築プロジェクトにおける「運用フェーズ – システム稼働後の継続的な価値提供」というテーマ、いかがでしたでしょうか。このフェーズは、RFPという羅針盤で定めた方向性、要件定義という航海図で描いたルート、そして基本設計書・詳細設計書という具体的な設計図に基づいて構築されたシステムが、本当に期待通りに、そして安全に動作するかを確認する、航海の最終確認のようなものです。

私自身の経験からも、この運用フェーズにおける継続的な改善活動が、プロジェクトの成功と、その後の長期的なシステム安定稼働に直結することを強く感じています。技術的な詳細ももちろん大切ですが、それ以上に「お客様が本当に求める品質」を追求し、それを客観的なデータで証明していくプロセスこそが、この運用フェーズの醍醐味なのではないでしょうか。このシリーズが、皆さんのITインフラ構築という旅の、確かな道標となることを願ってやみません。


よくある質問(FAQ)

Q1: 運用フェーズで最も重要なことは何ですか?

A1: 運用フェーズで最も重要なのは、システムの安定稼働を維持しつつ、ビジネスの変化に合わせて継続的にシステムの価値を向上させていくことです。単なる保守に留まらず、改善活動を計画的に実施することが求められます。

Q2: DevOpsは運用フェーズにどう影響しますか?

A2: DevOpsは、開発と運用が密接に連携し、システムのリリース頻度を高め、品質を向上させるアプローチです。運用フェーズにおいては、監視の自動化、IaC(Infrastructure as Code)によるインフラの迅速な変更、継続的なテストの実施などを通じて、より効率的かつ高品質な運用を実現します。

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